山田 啓二(やまだ けいじ)

みんなでつくる希望の京都。

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やまだ通信

京都府知事ブログ

Vol.20 「エンパワーメント型地方分権」

地方分権は、10年以上も前から取組が進められていますが、未だ東京一極集中は止まらず、地域間格差は逆に拡大しつつあり、地方分権が順調に進んでいるとは言い難い状況にあります。
 その理由には、様々なことが挙げられますが、「地方分権至上主義」も一つの要因だと思います。
 国家のあり方についてのきちんとしたビジョンもなく、あらゆる事務事業を「とにかく、地方に行わせるべきである」という考え方は、地域間の弱肉強食を生み、国と地方の間の行政を分断させ、単なる国と地方の権限争いに終わらせているおそれがあります。
我が国は、高度成長時代の積極的な財政投資を乳母日傘、護送船団方式により続けてきたため、ついに800兆円を超える借金を抱える事態に立ち至りました。その結果、地方に対する歳出も抑制され、多くの地方公共団体がぎりぎりの財政運営に追い込まれています。
 では、行政は手厚いかというと、消えた年金や事故米など、国の出先機関に代表される責任を取らない行政制度は、国民ニーズに沿った満足のいく行政を生み出さず、この国を閉塞感が覆っています。
 地方は国に頼らず、行財政改革に必死に取り組んでいます。国は、自らの無駄をなくす中で、地方との連携を一層深め、安定成長時代にあって、より住民のニーズを踏まえなければならないという時代感覚を持って、地方に権限を移譲し、自立を目指す地方を支える「自立再生型国家」とも言うべきものへ、この国の形を変えていくべきだと私は思います。
 もちろん行政の主役は国民ですから、これからの国家は、地域や住民がもっと力をつけ、その力が十分に発揮できるようにすることで、この国の再生を目指す、すなわち「エンパワーメント型地方分権」を実行することが必要になっていると思います。

何か、難しそうな話になりましたが、エンパワーメントとは、「組織の構成員に自律的に行動する力を与えること、阻害要因を排除して、伸び伸びと動ける環境を整えること」であり、できる限り自由にやらせることで人々の持っている能力を引き出そうという、大変当たり前の話です。
 いつまでも、子供にお小遣いを与えるように補助金を出していれば、お小遣い目当ての良い子しかできません。自分で自活する気力を持って、地域が頑張らなければ、多くの借金を抱え、今また未曾有の経済危機に直面している我が国を救うことはできないのです。誰かが経済を良くしてくれるというのは幻想です。
 マネーゲームに明け暮れていたらどうなったか。国民一人ひとりが、ものづくりや仕事に精を出さなければ景気は良くならないというのが、多くの国民の実感でしょう。それだけに、国民や住民が力を最も発揮できる「エンパワーメント型地方分権」が、今、必要とされているのです。

Vol.19 「地方自治を取り巻く悪い面とよい面」

  ~啓祥会総会 講演(平成19年10月17日)から~

私達を取り巻いている環境というのは必ずしもあまりいい面ばかりではありません。
悪い面としまして、格差は間違いなく拡大しています。これは国と地方、東京と地方、それから地方自治体の間でも。

今、国全体をみると景気は悪くありません。地方税収も全体としては伸びています。ところがそれが地方で働く人の生活実感、私どもの生活がよくなったということは全くありません。その一番の原因は、いわゆる三位一体改革です。国の補助金を削って、税源を地方公共団体へ委譲し、交付税もそれに合わせて整理をするという話しだったんですが、地方公共団体はこのおかげで、お金が来なくなり、今、七転八倒しています。そして、いろいろな面で住民サービスを切りつめています。このことが地方の疲弊につながっています。

具体的に言いますと、三位一体改革において、国庫補助金は約4.7兆円減りました。それに対し、税源委譲として、地方に3兆円渡されました。これだけで、 1.7兆円ぐらい差があるんですが、これに止まらなかった。私は、この補助金の4.7兆と税源委譲が3兆の差は地方が工夫をすれば埋められない数字ではないと思っておりますし、国が今830兆円の借金をしておりますから、それを回復するために、地方も協力していくことは当たり前ですので、ここは仕方がないと思います。ところがその影で、国から地方に渡される交付金、地方交付税が、実に5.1兆円も減らされてしまいました。このことが地方に大変厳しい状況を生んでいます。

京都府ひとつをみても、この間補助金が620億円減り、これに対し、税源委譲が610億円ぐらいですから、10億円ぐらいの差になります。この上に交付税が 1270億円も減らされました。これは京都府と市町村が半分ずつぐらいですから、京都府が600億円ぐらい交付税が減りました。
これをどうやってやりくりしてきたかと言うと、例えば、人員削減、事業集約化、それでも埋めることの出来ない分はお金を借りて、今なんとかやってきていますが、既に限界に達しているのが現状です。

こういったことを解決していくために、私達は2つの方法で頑張っていかなくてはならないと思っています。
ひとつは地域が、特に地方公共団体がしっかりしていくような体制、しっかりと自己決定ができる地方政府を確立していかなければならないと思います。
そして、もうひとつは、地域においてもみんなが支え合う、地方公共団体、国に頼るだけでなくて、地域の人々がお互い支え合うような社会をつくっていかなければならない。
地方政府の確立と地域の力をしっかりと活かしていく地域力を再生していく時代に入っていかなければならないと思っています。

私ども全国知事会の方では、第二期地方分権改革への提言を7月にまとめましたが、その中でも、地方公共団体がしっかりしなければならないという観点から、もう一度自分たちの財政基盤を確立していく戦いをやろうじゃないか。国に対しても私達地方公共団体が頑張るから私達に任せていただきたいという提言をしていこうじゃないか。それから行政組織についても、国も地方も簡素化して、国民から見て、無駄な事業をやっていると、無駄な組織になっていると言われないようにして、830兆円を超える借金を解消できる道筋を国と地方が手を取り合って直していこうという提言をさせてただいたところです。

正直言いますと、この議論というものが実りある方向にいっていないのが現状です。「地方政府の確立」だとか、「地方分権論」とか出てくると、必ず反対の動きが出てきます。
こうした地方政府確立論を妨げるのに、3つの議論があります。

ひとつは「どちらが裕福か」という議論。国が裕福なのか、地方が裕福なのか。言い換えると国が貧乏なのか、地方が貧乏なのかという議論です。今一番多いのがプライマリー議論というのがありまして、難しい議論なんですが、端的に言いますと、地方の方がかなり余裕があるんじゃないか、国の方が 830兆円を超える長期債務があって苦しいから地方の方が我慢をすべきじゃないかという議論が出てきます。
でもこれは、まやかしの議論で、なぜ、国が830兆円もの借金を作ったのかということを考えなくてはなりません。考えてみると、国に任すと借金を作るだけなんです。地方の方が借金が少ない。それは地方の方がちゃんとやったからです。ですから、国の方が苦しいから地方にツケを回すというのはですね、アリとキリギリスみたいな話しで、キリギリスがアリに向かって、「我々が借金いっぱい作っちゃったから、おまえさんとこで背負えるか」って言ってるのと同じです。キリギリスに任せていては駄目なんです。アリの方がしっかり働いているんだから、地方へしっかりと権限とカネを渡しておいたほうが借金は減りますよという議論をしなければいけない時に、「私の方が貧乏だから、地方の方がまだ余裕がある」という議論を展開させると、これは違う方向に行ってしまいます。従って、国・地方を通じて簡素な社会をつくらないといけないですよ。という議論を私どもは展開させたいと思っています。

もうひとつは「どちらが得か」論です。
地方分権を進めても、得じゃありません。補助金で配った方が地方は得ですよ。という議論を展開されることが多くあります。
「財源を渡してしまうと弱肉強食になって、これは却って東京が勝つだけですよ。地方が損ですよ」と。これも実は国に権限を残すだけの議論でありまして、そういうことをやってきてからこそ、実は無駄な借金が積もってしまったと。このことを忘れて、自立のできない護送船団方式の地方を作ってしまったから、夕張のような問題が起きてしまったわけです。こういう護送船団でやってる限りは、第二、第三の夕張が出てくるのは間違いありません。それだけにみんなが責任を持てる地方行政を作っていかなければならないというのが、私は2番目の論議に対する反論であります。

もうひとつは「どちらが悪いか」論。
舛添さんがこないだ言われてた「社会保険庁が悪い。それよりもっと市町村の方が悪い」この論議です。この論で進んでる限りは全く前に進まないわけです。社会保険庁が悪いのか。市町村が悪いのか。どっちも悪いじゃないかと言って、世間は終わってしまう。こんな非生産的な議論をしてはいけないわけです。しかし、残念ながらこの議論は説得力がありまして、国も国だけど、地方も地方じゃないか。という議論になってしまって、そして結局はどうせ何やっても駄目なんだ。この国はもう政治家も駄目だし、公共団体も駄目なんだ。だからもう。と言ってしまってるうちに、何もよくならないということになってしまいます。

そうではなくて、一番自分たちに身近な地方公共団体に権限と財源を渡して、そこをひとりひとりの住民が担っていく。社会保険庁の問題を見た時に、社会保険庁が何をやったかと申しますと、私達の年金の何億もの資金を年金以外のことに使っちゃったわけです。グリーンピアだとか、自分たちの研修施設だとか、全く国民の目の届かないところで年金財源が浪費されてしまった。

ほんとはこうした時にどうするべきか。歴代の社会保険庁長官に退職金を返せ。となりますよね。これを地方公共団体がやったらどうなりますか。まず間違いなく住民訴訟が起こります。住民訴訟で負けて、地方自治体の首長が何億円という債務をおうことがままあります。このくらい地方公共団体は責任をとります。
でも、社会保険庁は歴代長官、誰一人として責任をとりません。地方公共団体と国のどっちが責任を取るのかとなると、やっぱり最終的には地方が責任をとることになります。だから誰が悪いかがわかって、責任をとれるところに権限を持ってくる方が同じ悪いにしったっていいと思います。まあ、あまりいい議論ではありませんが。

悪いことばかり言ってきましたけれども、良い面も京都の場合、出てきています。
京都府の財政状況は悪いと言ってきましたが、平成17年で、実質公債比率、47都道府県で全国1位に、18年は10.7%で全国4位でした。これは、これまでの知事さんの時代に大変手堅い行政を行われたおかげです。
もちろん、行政改革の努力もしています。平成11年から18年の間に国家公務員の数は1.8%減りました。それに対して京都府は11.5%。約1割削減しました。 府内市町村も10.8%削減で、頑張っておられます。

それだけではなく、京都の場合は、いろいろな地域資源があります。
地域商標と言って、経産省が行っている、地域の資源を商標登録する制度がありますが、京都がダントツに多い出願件数になっています。
税収の伸び率も全国3位で、京都の底力を感じているところです。

この京都の底力をさらに推し進めるために、多くの地域の協働事業を進めています。
例えば、「京都ジョブパーク」、これは経営者協会や連合さんも一緒になって支える雇用のための組織を作りました。それから「京都モデルフォレスト」、ほんとに様々な企業が参画いただき、地域で京都の緑を守ろうという運動を展開され、全国運動へと拡がってきています。
医師確保の面でも、京都には府立医大があり、この府立医大を中心に地域医療機関と京都府と市町村が協力して、全国でもいちはやく医師確保体制をとることができ、分娩ができなくなった京丹後市で再開し、舞鶴においても休止に追い込まれた心臓血管外科を再開しました。
少人数教育の面におきましても、京都府では一律人数の少人数学級を押し付けるのではなく、少人数学級、チームティーチング、少人数授業という3つのどれを選ぶかを市町村教育委員会、学校、保護者といった学校現場に任せる京都式少人数教育方式を全国でも初めて取りました。
このほか「地域安全見守り隊」などいろいろな協働事業ができておりまして、多くのネットワークをこの数年で作ることができました。

京都府ではこうした事業の上に、もう一度、今ある「地域の力」というものを再結集しようと、今年度の予算で「地域力の再生」を加えました。おそらく、地域力の再生を主眼におき、重点施策とした府県は京都が初めてだと思います。今、「地域再生」という話しがいろいろ出てますが、京都府はこの分野でも一歩先をいくことができたと思っています。

そして、地域力の再生、難しい言葉で言いますと「ソシャール・キャピタル」、つまり「人と人との絆」をしっかりと取り戻していき、その中で地域の公の力を再生していきたいと思っています。

Vol.18 マニフェスト時代の地方行政

~ 早稲田大学マニフェスト研究所(所長・北川正恭前三重県知事)
自治体ファイナンス部会講演(平成19年8月28日)から ~

今春の統一地方選直前に公職選挙法が改正され、首長選に限られているものの、地方選でもビラの配布が認められることとなりました。事実上のマニフェスト解禁後初の統一地方選として、大きく注目され、有権者の地方自治への関心を高めるきっかけとなり、真の地方自治の実現へ向け、一歩前進したのではないかと思います。

私も昨年、全国知事会の政権公約評価特別委員会の委員長として、精力的に各方面へ地方選挙でのマニフェスト配布が可能となるよう法律改正を要請してきましたが、関係する皆様の御尽力により、なんとか今春の統一地方選に間に合う形で公職選挙法が改正されました。

マニフェストと従来の公約とがどう違うのかと言いますと、従来の「公約」は総花的なよいことを並べ、具体性と実現性に乏しいのに対し、「マニフェスト」は、数値目標、期限、財源、工程表などの具体的な政策・手法を明示するため、実行されたかどうかを後で検証することができ、有権者は首長を客観的な指標で評価しやすくなると言われています。

今回の公職選挙法の改正以前-昨年の私の選挙でもそうでしたが-は、マニフェストを作成しても、選挙期間中には配ることは難しく、有権者にしっかり伝えることができませんでした。

それが今春、A4版のビラ1枚ではありますが、有権者への配布が法的に認められたことは、有権者がマニフェストの概要を知ることが出来ますし、そこに書いてあるアドレスからホームページを通してマニフェスト全文を閲覧できますので、それなりの前進だったと思います。

今春の統一地方選以降の全国の知事選挙で、55人の候補者のうち約6割の32人がマニフェストを掲げて戦いました。「ローカルマニフェスト」が普及し、そして、今後もますます進むことはまちがいありません。ただ、「ローカルマニフェスト」を推進してきた一人として、少し危惧していることがあります。

マニフェストが普及し、多くのものが作られてくると、目標値や財源など具体的な数値が並べられながらも、実は明らかに実現不可能であったり、矛盾しているようなものが見受けられるようになったことです。

例えば、「人員を1割以上削減する」などの表現がみられますが、都道府県の4分の3を占める教員や警察官の定数は法令定数以下に削減することはできませんので、残りを知事部局で削減しようとすると、知事部局は半分以下に削減しなければならないといった、明らかに無理なものがあります。また、「ダムを止めればその額が乳幼児医療の無料化に回せる」と書かれたものもありますが、ダムには国の補助金がきますが、単独事業の乳幼児医療には補助金がありませんので、そのままの額を回すことは出来ませんし、ましてやダムは単年度のハード事業であるのに対し、乳幼児医療は継続するソフト事業であり、同じ視点で論じることは無理があります。

しかし、このようなことに、多くの有権者の皆さんが気づくことは難しいし、また客観的な評価を行うことの出来る機関も確立されていないため、当選するやいなや、すぐに撤回という事態も起きることになります。

これでは、旧来の公約よりもマニフェストは具体性があるだけに、かえって政治不信を煽り、マニフェストに対する信頼を損なうことになります。

マニフェストの普及が本格的な段階、第二ステージに入った今、私は、マニフェストを作るときの基本的なルールが作られるべきではと考えており、有権者がマニフェストを見極めるポイントのようなものも示すべきだと思います。
例えば、
(1)ハード事業とソフト事業を区別する、
(2)国庫補助事業から財源を捻出する場合は国庫補助分を控除する、
(3)起債事業からの財源捻出は、償還時にカウントする、
(4)人員の法令定数分は定数削減対象からはずす、
(5)人員の定数削減は、原則、定年退職者数の範囲内とする、
(6)任期内で実施することと、任期を超えて実現を目指すことを区別する、といったルールが必要ではないでしょうか。

さらに、マニフェストの評価は、これからの選挙において、有権者にとって、最も重要なことであります。マニフェストも作りっぱなしではなく、進行度のチェックや事後評価はかかせません。「マニフェスト公表」→「選挙」→「政策実行」→「事後評価」→「マニフェストの進化」といったサイクルをうまく回していけば、活きた選挙・地方自治が進められ、真の民主主義が実現していくでしょう。

そのためにも、しっかりした作成支援体制と評価体制の整備が今求められていると思います。

Vol.17 「全国知事会熊本会議、地方分権改革推進委員会との懇談」

去る7月12日~13日、熊本市で全国知事会議が開催されました。大きな議題となりましたのは「『第二期地方分権改革』への提言」でしたが、私は地方分権推進特別委員会委員長として、取りまとめにあたることになりました。本当に様々な御意見が出され、夜の10時過ぎまで熱心な討議が続き、二日目に調整案を諮ることとなりましたが、最後には合意することができ感謝しています。
提言の概要は、添付(PDFファイル)のとおりです。

今年は地方分権の推進にとって、大変重要な年です。地方分権改革推進法が成立し、政府に地方分権改革推進委員会が設置され、いよいよ第二期地方分権改革がスタートしました。
全国知事会熊本県会議では、国と地方の税源配分を5:5とすること、そのためには6兆円程度の税源移譲が必要であるという旗印を掲げることができたこと、同時に、国から地方への税源移譲に伴い、何らかの地方間調整が必要なことについて、合意ができたことは大きな成果と思います。
また、事務事業のあり方、権限移譲、国の関与の廃止、地方支分部局については、全国知事会として、初めて詳細なものを出すことができました。これから、第二期地方分権改革を具体的に進めるうえで、橋頭堡をまず築くことができたのではないかと思っています。

7月25日に大阪府池田市で開催された政府の地方分権改革推進委員会との懇談会で、早速、麻生全国知事会会長とともに、知事会の提言を説明し意見交換を行いました。
地方支分部局に関する基礎的な情報がなく、今回の提言が、基本的な考え方を提言するに止まっているため、今後、より具体的な検討を行うため、地方分権改革推進委員会へ地方支分部局に関する組織・事業・予算等の詳細な情報提供を求めました。丹羽委員長からも「各省庁へ追加要求していきたい」と積極的な取り組み姿勢をお聞きしました。

三位一体改革はもっぱら財源の問題に終始しましたが、第二期地方分権改革においては、税源移譲の問題、権限移譲の問題、組織の問題が一体的に議論されることにより、地方分権が具体的に進展していくことを期待しています。地方分権改革推進委員会の事務局の皆さんにとっても、組織の問題は、自分自身の体を手術する医師のような立場になるだけに、真価が問われていくと思います。
政府の地方分権改革推進委員会においては、5月に第二期地方改革の基本方針を策定されましたが、それを踏まえ、中間報告を秋にまとめられる予定です。
これらの動きを見据え、政府に対してもさらに本格的な申し入れを行って、地方分権の第二期改革を大きく進展できるようしっかりと頑張っていきたいと思っています。

Vol.16 目に見える危機と見えない危機

危機対応は現地現場主義と情報公開で

1月26日に東京都で開催された「第12回自治体トップフォーラム」で、全国から集まった170名を超える市町村長・市町議会議員さん達を前にして、「危機に気づく経営~現場、透明性、ミッション重視のリーダーシップ~」と題して講演をさせていただきました。

私は平成14年に知事に就任して、SARS、鳥インフルエンザ、台風23号など予期せぬ災害に次々に見舞われ、雨男ならぬ、災害男なのかと思ったこともあります。こういった緊急時の危機においては、トップの姿勢がまず何よりも問われます。鳥インフルエンザ危機の際には、SARSの教訓を活かし、現地・現場主義、情報公開を徹底的にやり抜くという姿勢で臨みました。

鳥インフルエンザの陽性判定が出た翌日に、誰よりも真っ先に私自身が現地へ向かいましたし、普通は会議室の中で対応を指示する立場の副知事・農林水産部長を現地に派遣し、危機の最前線で陣頭指揮を執らせました。また、26回に及ぶ対策本部会議はそのすべてをメディアに公開し、会議録は同日中にホームページに掲載しました。会議が終わった後に記者発表するかたちでは、何を発表するか決めるだけで時間が過ぎるのでそういう無駄なことをするより、すべてを公開する方が信頼を築く第一歩と考えたからです。

ただ、こうした目に見える危機には、責任感の強い京都府庁職員は素晴らしい力を発揮してくれるのですが、一方で怖いのは見えない危機です。

危機は危機だと思った瞬間に危機でなくなる

私が最も恐れるのは、平穏な日常の中で知らず知らずのうちに進行し、気づいたときには手遅れだったというものです。環境問題や教育問題、治安の問題など少しずつ悪化していく問題に本当に危機感を持って望めるかが今問われていると思います。

そして、こうした平時の危機を乗り切るためには、日常から現場感覚を大切にし、トップは常にミッションを明確に指示し、職員が問題に向き合う姿勢を作り、透明なプロセスに乗せて検討を深めていくことが重要です。

作った瞬間に計画は劣化する

危機感の欠如した行政の例としてわかり易いものに、行政が作る「○○計画」というものがあります。これまで行政が作る計画といえば、作ってしまった瞬間に、作った側に満足感が生じてしまうというケースが多かったのではないでしょうか。

作った瞬間に満足感を持つことほど無益なことはないと思います。なぜなら計画自体は何も生み出さないからです。

これでは、行政に危機感は生まれません。こういうところから、知らず知らずのうちに危機が進行してしまうのです。私は、このため、職員が計画作りから実行まで一連の緊張感を保ちながら取り組む「アクションプロセス京都」という独自の仕組みを実践しています。

具体的には、まずトップが職員との話し合いの中でミッションを決定し、それに基づき職員がアクションプランを作っていきます。プランを作る時には一般府民や専門家の方に参画いただき、協働して現場からボトムアップで政策立案をしていきます。プランは9月議会で中間案を報告・議論し、パブリックコメントを行い、12月議会での最終議論を経て決定するという透明な過程をとり、次年度の予算案に即座に反映させますので、京都府では作りっぱなしのプランというものは存在しません。もちろん、予算が付けばそれで終わりと言うことではなく、毎年検証をし、実施過程をチェックして見直しを加え、PDCAサイクルに乗せていきます。

このプロセスを確立することによって、平時の危機を回避したいと考えています。すでにこのアクションプロセスは、ミッションだけでも50にものぼっており、外部から参加していただいている方も500人を超えています。

目に見える危機と見えない危機、両方の危機にしっかりと対処することが、これからの地域経営に求められています。私は、緊急時にはトップダウンで、平時にはボトムアップのマネージメントで、これからも勇気を持って危機に対峙していきたいと思います。

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